「群像展」を終えて③~初めての写真展の開き方~

前回の記事を書いた時は夏真っ盛りだったのに、いつの間にか秋になってしまいました。そんなことを言っているうちに冬になってしまいそうなので大慌てでこの記事を書いています。

ということで皆様こんにちは。今回は「群像展」を終えて③、写真展の開き方編です!
経験不足も良いところですが、初めてだったからこそ苦労したこと、上手くいったことを書いてみます。熟練者による指南ではなくて、あくまで初心者の体験談として。
なるべく細かく書いてみるので長くなりますが、これから写真展を開きたい!という人の参考になれば嬉しいです。

写真展を開くということ

この記事を読んでいる方の多くは写真展を開く、あるいは写真を展示したことがないと思います。
SNSの手軽さに比べて、写真展の開催は手間もお金も比較になりません。

ただ私自身、初めての写真展を開いてみて、プラットフォームの制約なく自由に作品を制作し、お客さんがじっくり作品を見てくれて、直接感想を言ってもらえることは非常に充足感・幸福感がありました。活動の(精神的)中心をSNSから展示に移したいと思えるほどに。

写真に本気で取り組んでいる方なら、一度は写真展にチャレンジしてみる価値があると思います。

写真展の開き方①:準備のスケジュール

「群像展」の開催までに準備した事と、取り組んだ時期を書いていきます。

企画開始(9ヶ月前)

群像展の開催時期は2021年8月。企画は2020年11月から始めました。
当初は2021年5月開催で、6ヶ月必要な想定で企画を始めました。6ヶ月の内訳は

  • 企画(参加者決め・展示コンセプトetc.):1.5ヶ月
  • 制作(準備・撮影・編集):2.5ヶ月
  • 制作(印刷・ブック)+会場準備:2か月

でした。
2021年初めに緊急事態宣言が発令されて8月開催に変更していますが、
それでも長期間撮影が出来なかったためギリギリでした。

ということで、初めての方なら最低6ヶ月以上の期間を確保しておくと良いと思います。

企画書(9ヶ月前)

個展なら必要ないですが、「群像展」はグループ展だったので最初に企画書を作りました。
参加メンバーを募るために必要な情報を最初にまとめておく必要があります。
企画書があれば、参加を打診された側も判断しやすくなるし、何より(金銭等の)トラブル防止になります。

参考までに「群像展」の最初期の企画書を置いておきます。
※出展者向けの企画書なので一部言葉が荒いですがご容赦ください

企画書に記載しておくべき内容は、

  • 展示コンセプト
  • 展示規模(人数)
  • 負担費用の見積もり
  • 開催期間

ぐらいあれば、参加するかどうか判断がつくのではないでしょうか。

展示コンセプト・展示規模の決定(8ヶ月前)

参加メンバーが決まったら、作品の制作と開催準備を始めていきます。

まず最初に決めたのが、『どんな作品を、どんな方法で展示するのか』です。

展示のコンセプトを深堀りして、必要な写真の内容と枚数を大まかに見積もります。
群像展では仮の展示レイアウトもこのタイミングで決めました。
ここで決めた内容が後々の作業全てに影響するので、ブレないようにしっかり考える必要があります。

会場・会期決め(6ヶ月前)

展示コンセプトと展示規模が決まったら、具体的に開催の準備を進めていきます。

まず一番早い時期に行う必要があるのが会場探し
展示枚数・レイアウトから必要な広さを見積もって、展示コンセプトに合った雰囲気で、予算内のギャラリーを探すのはなかなか大変です。
場所や時期にもよりますが、半年前には探し始めた方が選択肢が多いと思います。

ギャラリーを予約する際、必然的に会期も決めることになります。
「群像展」では、メンバーが在廊してお客さんに対応できる期間として土日祝3日間にしました。参加人数が多かったり、在廊の必要がないギャラリーならもっと長い期間でも良いと思います。

印刷/額装(2ヶ月前)

印刷は制作に並行してどこに頼むか調べて、2ヶ月前に入稿しました。
万が一のことを考えて、再印刷になっても間に合う時期にしました。

印刷もこだわりだすとキリがないですが、今回は一からラボの方に相談しました。
プロの方に相談するのが間違いないです。
「群像展」ではクリエイト銀座本店にお世話になりました。

また、展示の場合は印刷だけではなくて、展示するための加工(パネル加工・額装など)も必要です。
「群像展」では全て木製パネル加工にしました。自分達で加工することもできましたが、労力に見合うほど安くならないのと、失敗のリスクを考えてラボにお願いしました。

印刷に関してもう一つ苦労したのが、写真の編集です。画面上でしか見ない写真と同じ感覚で編集すると、印刷時に色が飽和したり階調が破綻してしまうことがありました。特に普段から彩度の高い編集をする方は気を付けた方が良いと思います。

開催のための準備(2ヶ月前)

写真展の開催には作品以外にも準備するものがたくさんあります。特に印刷が必要なものは納期がかかるので、2ヶ月以上前から計画的に進める必要があります。
「群像展」で用意したものは

  • 芳名帳・ペン
  • 消毒用アルコール/体温計
  • お金の入れ物
  • 会場入り口に設置する挨拶文
  • 会場内外に掲示するポスター
  • 販売物(ブック・ポストカード)
  • DM
  • 名刺
  • 感想ノート

等です。細かいものを上げ始めたらまだまだありますが、最低限これくらいは必要になると思います。
特にこのコロナ禍で重要なのが感染対策。各自治体が出している感染防止ガイドライン等を確認しておいた方が良いでしょう。

宣伝(2か月前)

情報解禁を本番2ヶ月前にしました。
これは私の友人達が1ヶ月前には撮影予定を立ててしまうので、その前に公開したかったからです。
2ヶ月間熱量を落とさず&しつこくならないように宣伝し続けるのは大変だったので、来てくれそうな人達の事情に合わせて時期は調整して良いと思います。

宣伝では展示コンセプト・没写真・各参加者の気持ち・アクセス情報を積極的に発信しました。
展示タイトルと日程しかわからない宣伝を見ることがありますが、その人自身がよほど人気者でない限り、何をやるのかわからない展示に来てくれる人は少ないと思います。
場所についても同様で、わかりやすい案内があれば『近くだし行ってみようかな』となりますが、それがなければわざわざ場所を調べてくれる人しか来てくれません。

宣伝を見ただけで「誰がどんな展示を、いつどこでやっていて、どうやって行けばいいか」簡単にわかる発信を意識しました。

搬入・設営(数日前~当日)

全ての準備を終えて開催日が近づいてきたら、あとは作品を搬入して設営すれば準備は完了です。
ただし、搬入も事前に準備しておくものがあります。

当日その場で写真の配置を考えるのは難しいので、ギャラリーの壁に合わせた写真の配置図があると便利です。特に複数人で設営する場合、『〇〇から△cmの場所に貼っておいて』と指示できると非常に楽です。

また、写真の設置方法も事前に検討が必要です。釘を打つのか、ピクチャーレールに下げるのか、ひっつき虫を使うのか。ひっつき虫は便利ですが、量が少ないと落ちてしまうことがあるので大量につけるのがコツです。

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群像展で用意した写真の配置図

そのほかの道具として、写真用手袋、水平器、メジャー、水糸や墨出し器などがあると写真を綺麗に設置できます。

写真展の開き方②:当日の運営

いよいよ写真展本番。規模や経験にもよると思いますが、とにかく忙しいです。
ある程度規模の大きな展示になると一人で会場全体を把握するのは不可能です。
「群像展」は展示数50点ほどの規模で、会場の端から端まで簡単に見渡せる広さでしたが、それでもある程度お客さんが入ると出展者全員の手が埋まってしまって、主宰者が細かく指示を出せる状況ではありませんでした。

事前にオペレーションの確認をして、全員が自分の判断で動けるようにしておく必要があります。

お客さんの体験

「群像展」のオペレーションで特に重視したのは、『お客さんを無言で帰らせない』こと。

お客さんがただ写真を眺めただけで帰ることにならないように、写真を見始める前と見終わったころに声をかけて、説明をしたり感想を聞くようにしました。
せっかく来ていただいたのに、全く交流せずに終わってしまうとお客さんにとっても出展者にとってもつまらない体験になってしまいます。可能な限り全員に話しかけるようにしました。

これも、事前に出展者で話し合って意識を揃えておいたからできたことです。

お金の管理

もう一つ大事なのが『お金の管理』。お金紛失しないように管理することももちろん、物販の会計処理でミスが無いようにしなければいけません。

会場でグッズ販売を行うと、商品に対して大きな責任を負う事になります。あらゆるトラブルを事前に考えて防止、あるいは起きた場合の対応を用意する必要があります。
開催にかかった費用を回収したいだけなら、物販よりも入場料やカンパの方が良いかもしれません。
いずれにしても、収入が発生する場合はその収支をキチンと記録しておく必要があります。

当日の運営で考えるべきことはもっともっとたくさんありますが、写真展の開催内容によって変わってきます。とにかく『事前にしっかり考えておく』に尽きます。

写真展の開き方③:その他あれこれ

ここまで書いたこと以外に、「群像展」開催で気づいたこと、反省したことなどをザッと書いていきます。

開催にかかる費用

群像展では全体で30万円ほどでした。
内訳は

  • ギャラリーレンタル:7万円
  • 印刷:21万円
  • 会場掲示物・小物類・DM等:4万円

A4を中心に約50枚(木製パネル加工込み)で枚数が多かったこと、セレクト前に大量のテスト印刷を行ったこと、フォトブックが高価だった(約6000円x10冊)ことなどが重なって、印刷代が非常に高くなりました。安くて品質の良いラボを探したり、自分で印刷するともっと費用は抑えられると思います。

この他に撮影費用が掛かります。

私はレンズと登山装備で20万円以上溶けました。

あると便利なスキル

重要なスキルが2つあります。『Illustrator』『プロジェクトマネジメント』です。

写真展(というかあらゆるイベント)にはデザインが必要です。
DMもポスターも名刺も、展示作品以外のあらゆる印刷物はイラレで制作します。
最低でも一人は扱えるメンバーがいないと大変です。

また、写真展の開催にはやるべきことがたくさんあります。作品を作るだけでなく、1つのイベントを成功させるために、主宰にはプロジェクトマネジメントのスキルが必要です。

お世話になったお店

残念ながら作品印刷をお願いするラボには明るくないですが、
『販売用ブック』と『作品以外の印刷』はかなり調べて、恐らくここ以外の選択肢は無い!というお店を見つけました。

まず『販売用ブック』。私の知る限り、個人製作のブックは1000~3000円程度が相場です。これを超えると有名カメラマンの商業写真集が買えてしまいます。
ではこの相場の価格でフォトブックを制作できるお店は、というと『しまうまプリント』一択です。
しまうまプリントでも印刷品質にこだわるとほとんど利益は出せません。お金を稼ぐためではなく、自分の作品を誰かの家においてもらうこと自体を目的にする意識の方が無難でしょう。

次に『作品以外の印刷』。ポスターやDM(ポストカード)、名刺などです。
こちらは『グラフィック』が間違いないです。
商品や紙の種類も豊富で印刷品質も良く、納期も早く、なにより安いです。
ただしIllustratorが扱えないと入稿が大変です。

初めて開くなら個展?グループ展?

初めて写真を展示するならどんな形態が良いか。
一回グループ展を開いてみた私の意見としては、

『グループ展に参加する』

を最初にやってみると良いと思います。一参加者としてなら、運営は他の人に任せて自分の作品に集中できます。まずは参加者として印刷や額装等の経験を積むのが良いと思います。

その次に個展を開くのがおすすめです。正直に言うと、グループ展の主宰はめちゃくちゃ大変でした。
規模が大きくなると考えることやることは増え、人数が多いとコントロールも難しくなります。
個展で小規模なイベントを自分でコントロールして開催する経験を積んでから、規模の大きなグループ展を主宰するのが良いと思います。

いきなりグループ展主宰はかなりハードでした。ほんとに。

フォロワーが少なくても集客はできる

最後に。私自身もそうだったのですが
『展示はフォロワー数が増えて有名になってから』と思っている人が多いと思います。

実はこれはあまり関係が無くて、展示に来てくれるのは大部分が知り合いです。或いは知り合いの知り合いです。
もちろん展示に来てくださって初めてお会いしたフォロワーの方も居ますが、『群像展』のお客さんの大部分は友人であったり、オンラインサロンの仲間だったり、告知をRTしてくれた友人の友人でした。

重要なのは数字だけではなくて、わざわざ足を運んで見に来てくれるほどの、人との濃いつながりです。対面でもSNS上でも、回りの人達を大切にしていれば、自分が本気で何かに取り組んだ時に返ってくるのだと思います。

フォロワーが少なくても、回りの人達と良い関係が築けていればお客さんは来てくれます。逆に言えば、いくらフォロワー数が多くてもそこを蔑ろにしていると写真展の成功は望めないと思います。

最後に

私にとって初めての写真展だった「群像展」の経験を備忘録的に書いてみました。これから写真展を開く人、開いてみたいけど不安な人の助けになれば嬉しいです。

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