28mmで演出する”近くて遠い”ポートレートの撮り方

こんにちは。ブログを書こう書こうと思いながらずっと現像に追われているみぞみぞです。放置している下書きはそろそろ10を超えそうです。

実は先日Instagramのフォロワーが一万人を超えました。いつも見てくださる方には本当に感謝しております。良い節目ということで今後は撮影や編集に関する記事も書いていこうと思いますので、皆様の参考になれば嬉しいです。頑張って記事書きましょう、俺。

28mmでポートレートを撮る

さて、今回はポートレートの撮影テクニックに関する記事です。ポートレートで主に使われるのは35〜85mm程度のレンズです。この範囲のレンズはいずれも、①人物が大きく歪まず②被写体とコミュニケーションを撮れる距離で撮影できるため人物撮影に向いています。

敢えてこの範囲外の焦点距離を使うことで写真に個性を加えることも出来ます。105,135mmなら圧縮効果と大きなボケ、20,24mmなら強烈なパース、といった特性を活用することで迫力のある写真を作り出すことができるでしょう。

ところで、こういう時全然話題にならない地味〜な焦点距離があります。

そう、28mmです。

近年の性能向上によって24mm以下の大口径レンズが普通になり、中途半端な画角故に使われなくなってしまった焦点距離。そして私が愛して止まない焦点距離。

今回は28mmという中途半端な焦点距離だからこそ出来るポートレートの撮り方に関するお話です。

“近くて遠い”ポートレートとは

一旦焦点距離の話題を離れて、モデルとフォトグラファーの距離感の話をしましょう。

「ポートレートにおける距離」として2つの距離を考えてみましょう。

まず物理的な距離。これは簡単なことで、寄るか引くかということだけです。画面に占めるモデルの面積が大きければそれだけモデルの印象が強くなり、小さければその余白(背景)に写っているものの印象が強くなります。

もう一つが心理的な距離。これは物理的な距離に比べると非常に複雑な要素で決まるものです。微妙な表情の違いや動き、構図や色味、更にはロケーションなど様々な要素が合わさって、フォトグラファーから見た(=鑑賞者が感じる)モデルとの心理的な距離は変わってきます。

この心理的距離感をコントロールすることで、ポートレートの作風は大きく変わってきます。最も距離感が近いのが彼女グラフィー・嫁グラフィー。逆に最も遠いものがファッション写真やアート写真、といった形で大別出来るでしょう(もちろん例外は多々あり)。

私が撮りたいのは被写体に手が届きそうで届かない、もどかしさを感じさせる距離感。物理的には目の前にいるのに心理的には少し遠くて、一枚壁を感じる写真を“近くて遠い”ポートレートと呼んでいます。

『28mm』と”近くて遠い”ポートレート

前書きの最後は、“近くて遠い”ポートレートと28mmの関係について。

心理的に少し距離がある相手の前では、普通は身振り手振りや表情の変化は控えめになります。そのような変化を写真に収めるには人物にフォーカスし、写真の中で際立たせる必要があります。

一方で、微妙な心理状態を表現するにはそこに至るまでの物語が必要です。つまり、被写体とフォトグラファーが置かれている背景を写し込んで、ある程度説明的な写真であるべきです。

人物にフォーカスするとなれば標準〜中望遠が適していますし、背景の情報を増やすなら広角が相応しいです。この矛盾する課題を同時にこなせるのが中途半端ゆえにバランスの良い28mm、というわけです。

作例

百聞は一見にしかず。ということでまずは作例をご覧ください。使用レンズはすべてSIGMA Art 28mm DG HSMです。

“近くて遠い”の雰囲気は伝わったでしょうか。物理的な距離は全身~顔のみのアップまで様々ですが、心理的には『壁一枚』くらいの微妙な距離感を狙った写真たちです。伝わったと信じて、ここからは28mmで”近くて遠い”ポートレートを撮影するための技術的な解説をしていきます。

28mmで”近くて遠い”ポートレートを演出する

当たり前ですが、”近くて遠い”の演出に最も大切なのはモデルとの『実際の心理的距離』です。きちんとモデルからの信頼を得た上で、撮りたいイメージに合わせて表情や動きをコントロールしましょう。

ここから解説していくのはそういった重要な技術を駆使して撮るポートレートに、28mmならではのレンズ効果を加えて演出を後押しするテクニックに過ぎないことに注意してください。

28mmの基本テクニック

まず、基本的に構図は日の丸になります。これは人物を画面端に配置すると、広角レンズの特性によって形が歪んでしまうからです。特に寄る場合は要注意です。

アングルにも気をつけましょう。ローアングルで撮影するとパースが効きすぎてしまって、人物の表情よりも構図のダイナミックさが目立ってしまいます。逆にハイアングルの場合はモデルが幼く見えたり、スタイルが悪く見えたりします。”近くて遠い”ポートレートを狙う場合は、水平アングルがおすすめです。

また、使用するロケーションも得手不得手があります。屋外で街並みや自然をダイナミックに取り込むのは得意ですが、狭い屋内で使用するときは背景を上手く整理しないと歪みばかりが目立ってしまいます。ある程度解放感のあるロケーションで使用する方がです。

28mmの使い方①ロケーションを活かした映画的演出

シネマチックな演出と28mm

シネマチック(映画的)という言葉は定義が曖昧で議論の尽きない話題ですが、この記事では『ロケーションと人物両方をバランスよく画面に取り込むことで物語性を生み出す』くらいの意味だと思ってください。

ポートレート写真の画面内にモデルだけでなく、ロケーション(背景)を適度に取り込んで場所・時間等の情報を加えることで写真に物語性を加えることが出来ます。ここで重要なのは人物の存在感の調整です。人物が小さい(=ロケーションの迫力が大きすぎる)と風景写真になってしまいますし、人物が大きすぎると物語性が薄まってしまいます。

この調整が28mmを活かすタイミングです。もちろん24mmでも35mmでもやってやれないことはないのですが、中間の28mmを使うことでバランスをとりやすくなります。

構図の複合によるロケーションの取り込みと物語性の追加

まず、人物は広角のセオリーにしたがって日の丸で配置します。そこに+αの構図を使うことでロケーションと人物をミックスしていきましょう。リーディングライン(主題に向かって視線を誘導する線)を作り出すことで自然にロケーション→人物へ視線を誘導することが出来ます。

例えば日の丸+対角線

あるいは日の丸+集中線

画面内で視線の流れを生み出すラインの先端あるいはライン上にモデルを配置することで、鑑賞者の視線を背景とモデルの間で行き来させ、ただ人物を見るよりも多くの情報を読み取らせることができます。

三分割や二分割のような水平・垂直な線を含む構図を使うと視線誘導の効果が弱くなる代わりに、背景に人物が溶け込みまとまりある絵になります。下の写真の様にモデルの視線を画面奥に向ければ、人物→ロケーションの向きへ視線を誘導することも出来ます。

このように、日の丸(人物)+α(ロケーション)の構図を組み合わせることでロケーションを写し込みつつも人物にフォーカスし、物語性のあるシネマチックな演出が可能になります。

28mmの使い方②寄りの写真にロケーションを取り込んで情報量を増す

もう一つの使い所が寄り写真。35mm以上の焦点距離で普通に寄ると人物中心になってしまいます。もちろんポートレートとしては何も間違っていないのですが、情景を伝えるには周囲の情報が足りません。

28mmを使って多くの情報を取り込むことでロケーション・状況を伝えられ、人物のインパクトを残しながら物語性のある写真にすることが出来ます。例えば下の写真では背景に街や空を写しこむことで、顔に当たる光が夕陽であることがわかるようにしています。

ただし、当然のことながら人物の歪みには気をつけましょう。日の丸構図を使うか、上の写真の様に最も歪みの目立つ頭頂部~後頭部を切ることで対処することもできます。

番外編:歪みを活かした演出法

ここまで「人物は日の丸」と言ってきましたが、セオリーとは壊すためにあるものです。

一つだけ、こんなことも出来るよという例をお見せします。

広角レンズでは画面端近くに人物を配置すると、画面の四隅に向かって歪む効果が発生します。この歪みが目に見えると不安定でプロポーションの崩れた写真になりやすくなります。

ですがこの写真ではあまり不安定な印象は受けないと思います。受けませんね?受けないでください。

ポイントは4点。

  1. 比較的人物配置の自由度の高い28mmを使う
  2. モデルの視線の先に暖色(=目線が行きやすく出っ張って見える色)の灯りを配置して、写真の重心をずらす
  3. 道路の標識・白線で右→左の力の流れを作る
  4. モデルに背筋を伸ばして上を向いてもらうことでモデルの腰→顔の力の流れを作る

これらの工夫によって、写真全体に右下→左上の力の流れを作っています。安定した背景でモデルだけが流れていたらアンバランスですが、画面全体に同じ向きの力を流せばまとまりを出すことができます。

この考え方は応用が効きやすく、様々なロケーションで利用することが出来ます。特に対角線構図と相性が良いです。広角レンズで日の丸以外のバリエーションを増やしたい時に試してみてください。

まとめ

今回の記事では、28mmという中途半端な焦点距離のレンズを使って、”近くて遠い”距離感のポートレートを撮る方法を解説しました。モデルとロケーションをバランスよく取り込み、物語性を加えていくのに28mmというレンズは最適です。

もちろん、人によっては24mmや35mmで切り取ったバランスの方が心地よいかもしれません。今回の記事で解説した方法そのままに囚われず、あくまで考え方の一例として皆さんのお役に立てば嬉しいです。

では、また次の記事でお会いしましょう。

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